セルヒオ・グティエレスさんは、ニカラグア北部ヌエバ・セゴビア県モソンテのコーヒー生産者です。ロス・ボルカンシートス農園を営んでいます。
30代の若い世代ですが、自分の農園に加えて、精選施設「エル・シャダイ」も運営しています。精選施設は、乾燥した豆の殻を取り、選別して袋に詰める施設です。ほかの農園から預かったコーヒーの精選も手がけています。
若い農園の始まり
ロス・ボルカンシートスは、セルヒオさんがモソンテに土地を手に入れて始めた、比較的新しい農園です。2023年の時点で、開園5年、2回目の収穫でした。農園を開いたのは、2018年ごろです。
2022年に初めてカップ・オブ・エクセレンス(COE)へ出品したときは、コーヒーづくりの「第一歩を踏み出したところ」と紹介されていました。農園は家族で営み、毎年少しずつ新しい区画を広げています。
二つの丘、ロス・ボルカンシートス
ロス・ボルカンシートスは「小さな火山たち」という意味です。この名前は、敷地の中にある同じ名前の二つの丘から付けられました。
農園はモソンテの山の中、標高1,220〜1,740mに広がっています。区画ごとの標高の差が大きく、同じ農園でも区画によって収穫の時期が変わります。収穫は1月から3月末ごろです。
2025年に入賞した「エル・リキダンバル」も、セルヒオさん家族の農園です。同じモソンテの、ボルカンシートス地区にあります。
新しい品種と、次の収穫
ロス・ボルカンシートスでは、これまで結果を残してきたカツアイやレッドパカマラを育てながら、新しい品種も取り入れています。
いま私たちが扱っている品種は、ジャバ、カツアイ、レッドカツアイ、レッドパカマラです。精製はナチュラル、ハニー、ウォッシュドの3つ。発酵を二段階に分けたカツアイのウォッシュドも輸入しました。
農園の高いところでは、シドラ、ゲイシャ、ローリーナ、チロソなどを育てています。今ある木を一度に植え替えるのではありません。収穫を続けながら、少しずつ新しい品種を増やしています。
精製も試験を続けています。発酵時間や乾燥のやり方を変えたロットをつくり、カッピングで確かめながら次の方法を考えています。
2025年のCOEでは、ゲイシャなどの珍しい品種が多く並ぶなか、なじみのあるレッドカツアイで入賞しました。
几帳面で、落ち着いた仕事
セルヒオさんは穏やかで、物事を一つずつ確かめながら話す人です。仕事でも、そのペースは変わりません。
2026年に私たちが精選の相談をしたときも、セルヒオさんが最初に確かめたのは具体的な条件でした。コーヒーが届く時期や量、必要な作業です。
セルヒオさんは、前もって日程を共有し、設備や保管場所を確保してからコーヒーを受け入れます。
経営も細かく分けています。コーヒー農園、精選施設、松などを扱う事業は、それぞれ収支を管理しています。コーヒーから得た利益は、農園へ再投資してきました。
セルヒオさんは、自分たちのコーヒーは「農園から輸出できる豆になるまで、自分たちの会社で一つひとつの工程を管理している」と話しています。
生産者たちが勧めた精選所
私たちがセルヒオさんと出会ったのは、2022年8月です。約1か月ホームステイをしながらニカラグアの産地を回ったときに出会った、5人の生産者の一人でした。COEで4位に入ったのは、その年の6月のことでした。
私たちがニカラグアで新しい精選先を探したとき、長年付き合いのある何人もの生産者から名前が挙がったのが、セルヒオさんでした。理由として聞いたのは、処理が丁寧であること。そして、安心してコーヒーを預けられる人であることでした。
エル・シャダイは、比重選別機(重さで豆をより分ける機械)や電子選別機(色で欠点豆をはじく機械)などを備えています。選別から計量、袋詰めまでを行います。
2026年に訪ねると、施設には新しい機械が運び込まれていました。処理能力を高めるための拡張が進んでいます。
2024年10月には、セルヒオさんが来日しました。SCAJ(日本スペシャルティコーヒー協会)の展示会で、私たちのブースに参加してくれました。会場では、いつもロス・ボルカンシートスのコーヒーを扱っているロースターをはじめ、多くの人と直接話しました。そのあと山口県周南市にも足を運び、私たちの拠点を訪ねてくれました。
2026年にニカラグアを訪ねると、セルヒオさんはこれまでの交流をまとめた写真のコラージュを用意して待っていてくれました。
若い農園でCOE4位
まだ収穫を始めて間もなかった2022年、レッドカツアイとレッドパカマラのウォッシュドをCOEに出品しました。結果は、4位・89.35点です。当時、セルヒオさんたちは、スペシャルティコーヒーの世界ではほとんど知られていませんでした。この受賞をきっかけに、農園の名前が広く知られるようになりました。
翌2023年には、レッドカツアイのウォッシュドが86.35点でナショナルウィナー(COEの国内審査を通過したロット)に選ばれました。2024年には、レッドパカマラのウォッシュドが20位・87.60点に入っています。
2025年には、エル・リキダンバルのレッドカツアイ ナチュラルが、ナチュラル&ハニー部門で14位・87.41点に入りました。セルヒオさんは、「4回出品して、毎回入賞者に選ばれた」と話しています。
- 2022年 カップ・オブ・エクセレンス(COE)ニカラグア 4位・89.35点 ロス・ボルカンシートス/レッドカツアイ&レッドパカマラ ウォッシュド
- 2023年 COE ニカラグア ナショナルウィナー・86.35点 ロス・ボルカンシートス/ウォッシュド
- 2024年 COE ニカラグア 20位・87.60点 ロス・ボルカンシートス/レッドパカマラ ウォッシュド
- 2025年 COE ニカラグア ナチュラル&ハニー部門 14位・87.41点 エル・リキダンバル/レッドカツアイ ナチュラル
ロス・ボルカンシートスはまだ若い農園で、これから収穫を迎える新しい品種がいくつもあります。一方で、セルヒオさんの仕事は、すでに自分の農園だけにとどまりません。農園と精選所を少しずつ整えながら、ほかの生産者からも頼られる精選者として、任されたコーヒーを確実に仕上げています。

