セルヒオ・ハルキンさんは、ニカラグア北部ヌエバ・セゴビア県モソンテのコーヒー生産者です。お父さんのホセ・リベラト・ハルキンさんとともに、ラ・ベンディシオン ファミリーエステートを営んでいます。
2008年、ほとんど何もない山を家族で切り開くところから、農園づくりを始めました。量を増やすことより、品質を高めることを大切にしています。品種や栽培、収穫、精製の改善を続けてきました。
近年はその成果が評価され、2025年には「The Best of Maragos」で優勝しました。2026年には、カップ・オブ・エクセレンス(COE)のナチュラル&ハニー部門で11位に入っています。
何もない山から始まったファミリーエステート
ラ・ベンディシオン ファミリーエステートが始まったのは、2008年です。土地を買ったのは、お父さんのホセ・リベラトさんでした。仕事を退いたあと、山で過ごす場所として求めたのが始まりです。手応えを感じるにつれ、コーヒー農園として手を入れていきました。
土地を買った当時、そこには農園の拠点となる建物もありませんでした。セルヒオさんたちは、まず山の中に住むための小屋を建てるところから始めました。
急な斜面をならして基礎をつくり、木を切って運び、建物を建てる。コーヒーを植える土地も一から切り開き、その多くを自分たちの手で進めました。
ホセさんは、開拓のはじめからセルヒオさんとともに仕事を続けてきました。長い時間をかけて、いまのファミリーエステートを築いてきた人です。2022年に代表が訪ねたときも、セルヒオさんと冗談を交わしながら、農園の仕事を見守るホセさんの姿がありました。
「とても寒い」山の農園
ファミリーエステートは、標高1,471〜1,783mの涼しい山の中にあります。多くの植物や生き物が見られる環境です。「とても寒い」と言われるほどの高地です。
コーヒーを植えている面積は、22マンサナ(約15ha)です。収穫は1月から3月末ごろ。
品種と精製を確かめながら
最初に植えたのは、育てやすいカティモールでした。その後、品質を求めて、ブルボン、カツーラ、カツアイ、マラカトゥーラなどへと品種を広げていきました。
2026年に代表がファミリーエステートを訪ねたときには、イエローブルボンをはじめ、その年に収穫したロットをいくつも農園でカッピングしました。ゲイシャ、SL28、ピンクブルボンなどの区画も歩きました。品種ごとの育て方や、その年の気候が開花や収穫量に与えた影響も確かめています。
精製では、発酵時間を長くすること自体を目的にはしていません。発酵による風味と、品種本来の甘さや特徴とのバランスを見ています。そのうえで、ロットごとに発酵時間や処理の方法を変えています。
ファミリーエステートでは、これまでウォッシュドを中心につくってきました。農園から乾燥場までの道路の状況を考えると、果皮を除いて重さとかさを減らすことで、運ぶ負担を抑えられます。山あいならではの事情です。
いまはウォッシュドに加え、アナエロビック(酸素を断って発酵させる精製)などにも取り組んでいます。私たちはこれまでに、イエローカツアイ、イエローブルボン、マラカトゥーラを輸入してきました。72時間発酵のウォッシュドや、カーボニックマセレーション(実のまま密閉して発酵させる精製)のナチュラルも届いています。
量を追わず、品質を高める
セルヒオさんたちが農園で大切にしているのは、生産量を増やすことよりも、コーヒーの品質を高めることです。
収穫では、チェリーの糖度を確かめながら摘み取ります。近年は、精製を自分たちで管理するため、ウェットミル(果肉を除き、発酵・水洗いする設備)も入れました。設備には大きな費用がかかります。それでも、投資の回収のために量を増やすのではなく、品質の高いスペシャルティコーヒーづくりに力を注いでいます。
また、コーヒーの木を等間隔に植え、農園の管理や収穫をしやすくするなど、栽培でも改善を重ねてきました。
2022年、ホームステイから始まった関係
代表がセルヒオさんと出会ったのは、2022年のニカラグア滞在中でした。当時、代表は約1か月ホームステイをしながら産地を回り、多くの生産者と会っていました。サンプルを受け取ったり、カッピングに招かれたりと、出会い方はさまざまでした。その中でも、セルヒオさんとの出会いは心に残るものでした。
セルヒオさんは代表を自宅に招き、手挽きのミルでコーヒーを挽いて、ケメックスで淹れてくれました。特別な商談をするわけでもなく、コーヒーを飲みながら自然に話をする。その飾らない人柄にふれ、代表はセルヒオさんと長く付き合っていきたいと考えるようになりました。
2022年の出会いのあとも、代表はセルヒオさんの農園を続けて訪ねています。いまでは農園を歩き、その年のロットを一緒にカッピングしながら、栽培や精製について意見を交わしています。
主な受賞歴
ファミリーエステートのコーヒーは、2018年にホセさんの名義でCOEに初めて出品し、入賞しました。レッドカツーラのウォッシュドで、31位・87.09点です。2022年には、イエローカツアイなどのナチュラルが13位・87.59点に入りました。
そして2026年、セルヒオさん本人の名義で出したマラカトゥーラのナチュラルが、ナチュラル&ハニー部門で11位・87.94点に入りました。3年続けて挑戦し、思うような結果が出ない年を越えての入賞でした。セルヒオさんは「忍耐と情熱と、すべての工程への敬意でつくったコーヒー」と話しています。
- 2018年 カップ・オブ・エクセレンス(COE)ニカラグア 31位・87.09点 ラ・ベンディシオン ファミリーエステート/レッドカツーラ ウォッシュド(名義:父ホセ・リベラトさん。初出品)
- 2022年 COE ニカラグア 13位・87.59点 ラ・ベンディシオン ファミリーエステート/イエローカツアイ、カツーラ、イエローブルボン ナチュラル(名義:父ホセ・リベラトさん)
- 2026年 COE ニカラグア ナチュラル&ハニー部門 11位・87.94点 ラ・ベンディシオン ファミリーエステート/マラカトゥーラ ナチュラル(セルヒオさん本人の名義で初めて)
何もない山を一から開拓したお父さんとともに、長い時間をかけてファミリーエステートを築いてきたセルヒオさん。品種を増やし、収穫や精製にも少しずつ手を加えながら、家族の農園のコーヒーをより良いものにする仕事を続けています。



