エルネスト・リマさんは、エルサルバドルの生産者フェルナンド・リマさんのお兄さんです。国際弁護士として働きながら、コーヒーの農園を営んでいます。
農園の名前は、ラス・ヌベス。スペイン語で「雲」という意味です。ソンソナテ県ナウイサルコのアレナレス地区、サンタ・アナ火山の山なみの高いところにあります。
1930年代から続くブルボンの農園
ラス・ヌベスでは、1930年代からコーヒーを育ててきました。中心はブルボンです。いまはゲイシャやパカマラも植えて、この土地に合うかどうかを見ています。
2005年、サンタ・アナ火山が噴火し、農園に灰が降りました。コーヒーの木と日陰の木の7割ほどが傷みました。その後の嵐では、大きな土砂崩れも起きています。エルネストさんの家族は、長い時間をかけて農園を立て直し、木を植え直してきました。
2010年6月には、熱帯暴風雨アガサで、農園へ続く道と農園の中の道が大きく壊れました。エルネストさんは、この年のCOEオークションで得たお金を、すべて道の復旧に充てると決めていました。
雲のかかる高地、ラス・ヌベス
ラス・ヌベスは、標高1,442〜1,659mの斜面にあります。広さは約90haで、そのうち80haにコーヒーを植えています。農園の中には「エル・タンボール」という約15haの区画があり、標高は1,558mです。
農園は、ロス・ボルカネス国立公園とセロ・ベルデに接しています。土は火山からできた黒い土です。雨は年に約2,800mm降り、平均気温は16℃ほど。涼しい土地です。
日陰の木には、イトスギ、コロソ(ヤシの仲間)、インガ、アルボル・デ・チョロ、ジャカランダが育っています。農園には鹿やアルマジロもすんでいます。
弟フェルナンドさんの農園は、サンタ・アナ火山の火口をはさんで反対側にあります。同じ火山でも、気候や土が違えば、コーヒーの味もはっきり変わります。兄弟のコーヒーを飲みくらべると、その違いがよく分かります。
品種と精製
エルネストさんがいちばん力を入れているのは、ブルボンです。品質が高いのに、いまでは育てる人が減り、消えかけている品種だからです。COEに入賞したロットも、すべてブルボンのウォッシュドでした。
エルネストさんは兄弟の中でも、新しい精製に早くから取り組んできました。いまはウォッシュドのほかに、「イースト アナエロビック」もつくっています。酵母を加え、酸素を断った状態で発酵させる精製です。ラス・ヌベスとエル・タンボールの両方でつくっています。
収穫は1月から4月。バルカネスの精製所で果肉を除き、ウォッシュドは12時間、酵母を加えるアナエロビックは48時間、水を使わずに発酵させます。そのあと、クレイタイルの乾燥場で16日ほど、水分11%まで乾かします。仕上げはクスカチャパの乾燥・出荷場で、欠点豆を手で取り除いてから袋詰めします。
品質へのこだわり
ラス・ヌベスは、2004年に有機栽培に戻しました。2010年にはアメリカ(USDA・NOP)と日本(JAS)の有機認証を受けていて、いまも有機で育てています。
このあたりの土は、火山灰で酸性が強くなっています。そのため、肥料は農園でつくる自然のものだけを使っています。ミミズ堆肥、コーヒーの果肉、ボカシ(発酵させた有機肥料)です。
実は、熟しきるまで待ってから手で摘みます。摘んだ実から、さらに良いものだけを選びます。
農園で働く人たちの暮らしを手厚く支えていることも、兄弟に共通しています。農園では、何代にもわたって同じ家族が働いています。
BOOKyourCOFFEEとの出会い
はじめは、弟フェルナンドさんのコーヒーをカッピングするときに、エルネストさんのコーヒーも一緒にカッピングしていました。同じサンタ・アナ火山の斜面なのに、系統の違う風味。そして質の高さ。それにひかれて、エルネストさんに会う前から買い付けていました。
2010年、いつもカッピングをさせてもらっているクスカチャパ農協で、初めてエルネストさんに会うことができました。そのとき、エルネストさんのコーヒーにとても満足していると伝えました。これが私たちの出会いです。
その後、ラス・ヌベスの中でも、区画エル・タンボールのコーヒーを分けて輸入するようになりました。いまでは、両方を仕入れる年が増えています。
ラス・ヌベス全体では、パカマラ、カツーラ、ブルボン、ゲイシャを育てています。エル・タンボールは、ブルボンが中心です。エル・タンボールのブルボンは、質感が軽やかで、風味が華やか。ラス・ヌベスのブルボンは、しっかりした質感と濃い甘さが特徴です。
同じ農園の同じ品種でも、区画が違うと風味がはっきり変わる。その分かりやすい例です。一般のお客様にも違いが伝わるほどなので、あとはお好みで選んでいただいています。
主な受賞歴
- 2003年 カップ・オブ・エクセレンス(COE)エルサルバドル 7位・87.16点 ラス・ヌベス/ブルボン ウォッシュド
- 2010年 COE エルサルバドル 27位・84.39点 ラス・ヌベスI/ブルボン ウォッシュド
- 2014年 COE エルサルバドル 15位・86.21点 ラス・ヌベス(有機)/ブルボン ウォッシュド
COEの審査員は、2010年のロットにダージリンティー、くるみ、オレンジ、シナモンの風味を、2014年のロットにココナッツ、サトウキビ、パパイヤ、カカオの風味を挙げています。
ラス・ヌベスのコーヒーには、噴火や嵐のあとに家族で植え直してきた時間と、新しい精製を試し続けるエルネストさんの姿勢が表れています。
弟フェルナンドさんのロットと、そしてラス・ヌベスとエル・タンボールを、ぜひ飲みくらべてみてください。同じ火山の、それぞれの土地の違いを感じていただけるはずです。
