Eudoro Guillen
Coffee Producer
Eudoro Guillén
Nicaragua / Nueva Segovia
エウドロ・ギジェンは、ニカラグア北部のヌエバ・セゴビア県で、 サン・ホセ農園、ロス・ピリネオス農園、エル・リクエルド農園を 家族とともに営むコーヒー生産者です。
父から受け継いだ農園を、妻のノルマとともに守りながら、 栽培、精製、品質評価の一つひとつを見直し、 毎年少しずつコーヒーの完成度を高めてきました。
父の代から続く付き合い
BOOKyourCOFFEEとギジェン家との付き合いは、 現在のエウドロより先に、 同じ名前を持つ父との出会いから始まりました。
出会った当初、父エウドロのコーヒーは カッピングテーブルに並んでいましたが、 私たちが農園を訪ねても、 なかなか本人に会うことはできませんでした。
当時は、海外から買い手が訪れても、 挨拶をして写真を撮るだけで、 翌年以降の取引が続かないことも珍しくありませんでした。
本当に毎年買ってくれるのか。 コーヒーを正しく評価してくれるのか。 生産者が慎重になるのは当然のことだったと思います。
それでも私たちは毎年現地へ通い、 コーヒーを買い続け、 少しずつ農園との距離を縮めていきました。
数年後、ようやく直接会って話ができるようになったときの 安堵感は今でもよく覚えています。
現在では、私たちがエウドロの家に長く滞在したり、 子どもを連れてホームステイしたりするほど、 家族ぐるみの付き合いになりました。
若くして受け継いだ3つの農園
エウドロは、ニカラグア北部の町オコタルで生まれ育ちました。
大学進学を機に首都マナグアへ移り、 ビジネスを専攻しました。 卒業後は地元へ戻り、父の農園を手伝い始めます。
しかし、その約2年後に父が他界。 エウドロは若くして農園経営を引き継ぐことになりました。
現在は、サン・ホセ農園、ロス・ピリネオス農園、 エル・リクエルド農園の3つを管理しています。
父から受け継いだ農園なので、 父の名前を汚したくないという思いがあります。
ただ維持するだけではなく、 父ができなかったことまで、 自分たちの代で実現したいと思っています。
エウドロが受け継いだのは、 土地やコーヒーの木だけではありません。
農園で働く人たちとの関係や、 家族の生活を支えながら仕事を続ける責任も、 父から引き継ぐことになりました。
ノルマと二人三脚で支える農園
エウドロの農園を語るうえで、 妻のノルマ・エリサ・フローレスの存在は欠かせません。
二人はともにオコタルで生まれ育ちましたが、 親しく話すようになったのは、 故郷を離れて通っていたマナグアの大学でした。
在学中には子どもにも恵まれました。 父が、二人が学業を続けられるように マナグアで家を購入し、 家族で暮らしながら卒業まで過ごしました。
その家は現在、賃貸物件として活用されています。
ノルマは家庭を支えるだけでなく、 農園経営にも深く関わっています。
私たちが付き合ってきた生産者の中でも、 エウドロ夫妻は特に、 二人が中心になって農園を動かしている印象の強い夫婦です。
栽培や品質面の計画を考えるエウドロと、 家族や働く人たちを支え、 経営面でも力を発揮するノルマ。
どちらか一人が農園を背負うのではなく、 二人で判断しながら進めてきたことが、 現在の農園の安定につながっています。
最初は半信半疑だった
BOOKyourCOFFEEとの取り組みについて尋ねたとき、 エウドロは、最初は半信半疑だったと率直に話してくれました。
毎年継続して買ってくれるのか。 味を正当に評価してくれるのか。 将来、買付量を増やしてくれるのか。
長い取引を約束する買い手が、 本当にその言葉どおりに動くとは限りません。
最初に心配していたことは、 今ではすべて実現してもらっています。
それだけでなく、 私たちが期待していた以上の関係になりました。
信頼できる売り手がいることで、 私たちはコーヒー作りに集中できるようになりました。
私たちとの関係を通じて、 エウドロはほかの生産者とも より深く関わるようになりました。
農園経営の悩みや、栽培、品種、精製について話し合い、 品質を高めるための新しい考えを 得られるようになったといいます。
毎年農園へ行き、味を確かめる
エウドロが、一般的な商社や仲介業者との違いとして挙げるのは、 私たちが毎年農園まで足を運ぶことです。
生産者を訪ねても、挨拶をして写真を撮るだけで、 農園の状態や仕事の実態までは 見ようとしない買い手もいます。
私たちは畑の中を歩き、 木やチェリーの状態を確認し、 その年のコーヒーを一緒にカッピングします。
その場で味を評価して終わるのではなく、 次の収穫ではどこを変えるのか、 どの品種を伸ばすのか、 何を試してみるのかまで話し合います。
味をきちんと見てもらえることで、 次に何を変えるべきか判断しやすくなります。
翌年、改善した結果をまた見てもらえるので、 品質を高めるための流れができます。
カッピングができる人に正しく評価してもらうことは、 生産者としての自信にもつながります。
買い付けるだけでなく、 評価し、改善し、翌年また確かめる。
エウドロのコーヒーは、 この繰り返しの中で少しずつ変わってきました。
栽培から精製、品質評価まで
これまでエウドロは、 収穫後の精製工程を外部へ委託していました。
しかし近年、品質をさらに細かく管理するため、 精製も自分たちで行う体制へ切り替えています。
チェリーの状態を見ながら、 発酵、果肉除去、洗浄、乾燥まで管理できるようになれば、 その年の状態に合わせて判断できる幅が広がります。
最近では娘も農園の仕事に加わり、 エウドロ夫妻とともに、 家族でコーヒー作りに取り組んでいます。
また、少量のコーヒーを焙煎して確認するために、 IKAWAのサンプルロースターも導入しました。
現地で自分たちのコーヒーを焙煎し、 すぐにカッピングできれば、 精製や乾燥の結果を早い段階で確かめられます。
コーヒーを育てるだけでなく、 精製し、焙煎し、味を確認するところまで 自分たちの手で行う。
エウドロ一家は今、 品質をより自分たちで管理できる農園へと変わりつつあります。
派手さよりも、毎年少しずつ良くする
エウドロのコーヒーは、 約20年前から現在まで、 私たちのラインナップの中で 親しみやすい存在として飲まれてきました。
強い発酵感や奇抜さを前面に出すのではなく、 伝統的な品種や精製方法を大切にしながら、 甘さや飲みやすさ、全体のまとまりを高めていくのが特徴です。
大きな変化がないように見える年でも、 農園では品種の選定や木の植え替え、 完熟したチェリーの選別、 発酵や乾燥方法の見直しが続いています。
流行だけを追って急に方向を変えるのではなく、 数年先まで考え、 必要なことを一つずつ実行していく。
その堅実さが、エウドロのコーヒーらしさにつながっています。
父の代から続くCup of Excellence
ギジェン家の農園は、 父の代からCup of Excellenceで評価されてきました。
2008年には、 父のエウドロ・ギジェン・ゴンサレス名義で、 サン・ホセ農園が11位に入賞しています。
現在のエウドロが農園を引き継いだ後も、 2015年にサン・ホセ農園、 2018年にロス・ピリネオス農園が入賞しました。
2021年には、 ロス・ピリネオス農園のカツアイ・ナチュラルが 90.21点を獲得し、3位に入賞しています。
同じ年には、 母シルビア名義のサン・ホセ農園も、 カツーラ・ナチュラルで7位に入りました。
一度だけ高く評価されたのではなく、 父の代から受け継いだ複数の農園で、 長く結果を残してきたことがギジェン家の特徴です。
農園で見つかったニカトピア
ロス・ピリネオス農園では、 ほかの木とは異なる特徴を持つ コーヒーの木が見つかりました。
私たちは後に、このコーヒーを ニカトピアと呼ぶようになります。
遺伝子解析では、 エチオピアの土着品種群につながる特徴を持ちながら、 ゲイシャ、チロソ、シドラなど、 すでに知られている品種とは一致しないことが分かりました。
ニカトピアは、 最初から新品種として計画的に作られたものではありません。
農園の中にある一本の木の違いに気づき、 実を収穫し、味を確かめ、 少しずつ増やしてきたコーヒーです。
現在ではウォッシュドだけでなく、 カーボニックマセレーションなどの精製にも取り組み、 この品種が持つ可能性を探っています。
昔からある品種の品質を高める一方で、 農園の中で見つかった新しい可能性も見逃さない。
ニカトピアには、 エウドロの慎重さと好奇心の両方が表れています。
環境を残しながら農園を続ける
エウドロの農園では、 除草剤を使用していません。
農園の草は、 マチェーテと呼ばれる鉈を使い、 人の手で刈っています。
地面が完全に露出しないように、 草を20センチほど残すこともあります。
土がむき出しになると、 乾燥や土壌流出が起こりやすくなり、 土の中の微生物や生き物にも影響が出るためです。
また、人の手で草を刈ることで、 小さなコーヒーの苗を 誤って刈ってしまうことも防いでいます。
害虫対策や肥料についても、 できるだけ化学的な資材に頼らず、 天然由来や有機質のものを使うようにしています。
近年は資材価格が上がっていることもあり、 農園で使用する堆肥も 自分たちで作り始めました。
農園内には湧き水があり、 その水は川へと流れています。
水洗処理で使った水が そのまま周囲へ流れ出ないように、 浄水槽を設けて処理しています。
特別な取り組みとして見せるためではなく、 この土地で農業を続けるために必要なこととして、 日々の管理に取り入れています。
働く人と、その家族まで考える
エウドロは、 人生で幸せだと感じることとして、 子どもに恵まれたことと、 家族を支える仕事があることを挙げています。
ただし、農園は家族だけでは運営できません。
畑の管理や収穫を支える多くの働き手がいて、 初めて一つのコーヒーが完成します。
コーヒーを作ることは、 ただ豆を売ることではありません。
一緒に働く仲間と、その家族との歩み寄りであり、 お互いが成長していくことでもあります。
働いてくれる人たちを大切にするためには、 ときには自分の利益を後回しにする必要もあると思っています。
良いコーヒーを作ること。 農園を経営として続けること。 働く人とその家族の暮らしを守ること。
エウドロにとっては、 どれか一つだけでなく、 そのすべてが農園の仕事です。
農園を支える、コーヒー以外の仕事
エウドロ夫妻は、 コーヒー農園のほかに、 小規模な果樹農園や乳牛の牧場も営んでいます。
また、首都マナグアでは 不動産の賃貸経営も行っています。
コーヒーは、 天候や収穫量、国際価格の影響を受けやすい作物です。
コーヒー以外の収入を持つことは、 収穫の少ない年にも家族の生活を守り、 農園への投資を続けるための支えになります。
大学でビジネスを学んだエウドロと、 行動力のあるノルマ。
二人はコーヒー生産者であると同時に、 家族と農園の先を考える経営者でもあります。
主な受賞歴
-
2008 Nicaragua Cup of Excellence 11位・86.60点
San José / Caturra・Bourbon
父 Eudoro Guillén González 名義 -
2015 Nicaragua Cup of Excellence 13位・87.08点
San José -
2018 Nicaragua Cup of Excellence 29位・87.38点
Los Pirineos / Red Caturra Washed -
2021 Nicaragua Cup of Excellence 3位・90.21点
Los Pirineos / Catuai Natural -
2021 Nicaragua Cup of Excellence 7位・89.71点
San José / Caturra Natural
Silvia Esther Jarquín Agurcia 名義
エウドロ・ギジェンのコーヒーには、 父から受け継いだ農園を、 家族とともに少しずつ良くしてきた時間が表れています。
ギジェン家とBOOKyourCOFFEEとの関係も、 最初から近いものではありませんでした。
毎年農園を訪れ、 コーヒーを買い、 味を確かめ、 改善について話し合う。
その積み重ねによって、 現在では家族ぐるみで付き合いながら、 次の収穫について一緒に考えられる関係になりました。
派手な変化だけを追うのではなく、 飲みやすさを大切にしながら、 精製や品質評価、新しい品種にも挑戦していく。
父から受け継いだ農園を守り、 そのまま残すのではなく、 自分たちの代でさらに良くしていく。
その姿勢が、 エウドロのコーヒーの土台になっています。